この記事では机と椅子(デスク)の描き方を解説します。
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机の描き方
今回、机と椅子のデザインは以下の写真を参考にします。
1. パースを設定する
まずはじめにパースを設定する必要がありますが、ここでは以下の記事で設定した部屋の大枠のパースを使います。
具体的なパースの設定方法は「STEP1 パースの設定」の章を参照してください。
部屋の大枠のパースとグリッドを使って、机の位置と大きさを決めます。
また今回は窓から入る光を光源とします。
窓を光源としたときの考え方は以下を参照してください。
>> 背景の描き方講座<室内編>「STEP3 ③フォームシャドウ」
2. 形を取る(レイヤー分け)
次に机の各パーツを面ごとにレイヤー分けします。
色はあとで付けるので、ここではレイヤーが判別しやすければどんな色を使ってもOKです。
レイヤーは「透明ピクセルをロック」して色がはみ出さないようにしておきます。
3. 色と陰影を付ける
レイヤー分けができたら、以下の順番で色と陰影を付けていきます。
- 固有色
- オクルージョンシャドウ
- フォームシャドウ
- キャストシャドウ
- 明部、ハイライト
- 反射光
- 質感
各用語について詳しくは以下の記事を参照してください。
① 固有色
まず固有色を置きます。
② オクルージョンシャドウ
ここからはかげを付けていきますが、乗算レイヤーと以下のかげ色を使います。
固有色レイヤーの上に乗算レイヤーを作成してクリッピングし、まずオクルージョンシャドウを置きます。
手順としては、「C油彩」を使ってかげを描いたあとに「ぼかし」を使って輪郭をぼかし、乗算レイヤーの不透明度を下げてかげの濃さを調整します。
③ フォームシャドウ
フォームシャドウを付けるときは、物体の各面に光源からの光がどのくらい当たるかを考えるのがポイントです。
今回の机には太陽からの直進光は当たらないので、窓を面光源とみなして散乱光が各面にどう当たるかを考えます。
まず天板の部分からみていきますが、窓に対して背を向けている部分が最も暗くなります。
残りの2つの面に関しては光源に対してどちらが明るくなるかわかりにくいところです。こういったときには以下のように光源からの光が物体の面となす角度をみてあげると、どちらが明るくなるか推測することができます。
この2つの面はどちらも光源側を向いている面なので、ここでは上面にかげ色をのせるのではなくあとで側面に明部色をのせることでフォームを表現します。
脚の部分に関しても同様にしてフォームシャドウを付けました。
④ キャストシャドウ
次にキャストシャドウですが、この机においては直進光によってできるキャストシャドウはないので、散乱光によってできるキャストシャドウを考えます。
下の写真にも見られますが、光源が複数ある場合にはキャストシャドウの中に別のキャストシャドウができます。
面光源によってできるキャストシャドウもパースをとって描くことはできるのですが、かなり面倒なのと面光源によるキャストシャドウの輪郭はかなりぼけるので感覚で描いてOKです。
もしも目安がほしい場合には、以下のように面光源の中心を光源の消失点としてガイドを引くのもひとつの手です。
今回は以下のようなキャストシャドウを付けました。
手順としては、「C油彩」を使って乗算レイヤーにかげ色でキャストシャドウを描いたあとに、「ぼかし」で輪郭をぼかしてレイヤーの不透明度を調整します。
⑤ 明部、ハイライト
かげを付け終えたら明部とハイライトを入れます。
ここでは以下の明部色を使います。
まず明部として天板と脚の側面部に明部色をおき、天板の上面にも光源側にわずかに明部色をのせてフォールオフを表現します。
手順としては、覆い焼き(発光)レイヤーに「不透明水彩」を使って軽いタッチで明部色をのせ、「ぼかし」で筆跡をぼかします。
そしてハイライト(エッジライト)として、面同士の縁の部分に「C油彩」で明部色を入れます。
ハイライトは見栄えがグッと良くなる要素なので面倒がらずにきちんと入れるようにしましょう。
⑥ 反射光
明暗を付け終わったので次に反射光を入れます。
今回は脚の部分に床からの反射光を、床の色を少し明るくした以下の色を使って入れます。
オーバーレイレイヤーに「不透明水彩」を使って反射色をのせ、筆跡を「ぼかし」でぼかしたらレイヤーの不透明度を調整します。
また今回壁が白色で反射光の影響を受けやすいので、机から壁への反射光も入れました。
⑦ 質感
最後に質感を加えます。
まず木材の部分は、固有色に対して少し暗い色と少し明るい色の2色を使って木目を描きます。
質感は固有色のレイヤーに直接描くか、固有色レイヤーのすぐ真上に通常レイヤーを作成して描くようにしてください(これまでの合成レイヤーの影響を質感にも反映させるため)。
脚の部分も、固有色に対して少し暗い色と少し明るい色の2色で「不透明水彩」と「ぼかし」を使ってわずかにグラデーションを入れました。
以上で机は完成です。
椅子の描き方
1. パースを設定する
今回椅子については部屋のパースから少し回転させたものにしようと思うので、椅子用のパース設定から行います。
ここではクリスタの3Dを使った設定手法を説明するので、部屋のパース設定がまだの方は事前に以下を参照してください。
>> 背景の描き方講座<室内編>「STEP1 パースの設定」
部屋の大枠のパースを作成した立方体の3Dを複製してカメラを動かします。
動かしたあとのアイレベルが元の部屋のアイレベルと重なるように回転させるのがポイントです。
パースが設定できたら椅子の位置と大きさを決めます。回転させたパースのグリッドの長さは元のパースと同じになっているので、それを基準に大きさを測ることができます。
今回は以下の位置と大きさで椅子を描いていきます。
2. 形を取る(レイヤー分け)
椅子の各パーツを面ごとにレイヤー分けします。
まず座面と背もたれ部分を「マジックペン」と「バケツツール」を使って以下のようにレイヤー分けしました。
次に脚部分をレイヤー分けします。
3. 色と陰影を付ける
レイヤー分けができたら、机と同じく以下の順番で色と陰影を付けていきます。
- 固有色
- オクルージョンシャドウ
- フォームシャドウ
- キャストシャドウ
- 明部(ハイライト)
- 反射光
- 質感
① 固有色
まず固有色を置きます。
② オクルージョンシャドウ
かげには机と同じく乗算レイヤーと以下のかげ色を使います。
まずオクルージョンシャドウは以下のように入れました。
③ フォームシャドウ
次に光源と椅子の位置関係を想像しながらフォームシャドウを付けます。
まず背もたれの部分について、光源を背にしている面が最も暗くなります。少し曲がった形状をしているので上側は少し残してかげ色をのせました。
次に側面部分にもかげ色をのせました。こちらは先ほどよりも乗算レイヤーの不透明度を下げて明るくなるようにしています。
乗算レイヤーの不透明度を調整することでかげ面ごとの明るさの違いを表現します。
座面部分については、まず側面にかげ色を置き、
光源を背にする部分にはさらに乗算レイヤーを重ねて暗くします。
座面の上面は背もたれによってかげになるのでそれも表現します。
最後に脚の部分は、光源側を少し残して以下のようにかげ色を入れました。
④ キャストシャドウ
最後のかげとしてキャストシャドウを描きます。
今回椅子には太陽からの直進光と窓から入る散乱光のどちらも当たるので、まずは直進光によるキャストシャドウを考えます。
窓のキャストシャドウを描くときに使った影の消失点と太陽光の消失点を使って、キャストシャドウの輪郭を以下のように割り出します。
輪郭の内部に乗算レイヤーでかげ色を置き、物体から離れている部分はぼかします。
ひとつの光源(今で言うと直進光)によってできるキャストシャドウの中に新たにキャストシャドウができることはないので、窓の影と重なっている部分は消します。
そして散乱光によるキャストシャドウは、以下のように脚元に入れました。
⑤ 明部、ハイライト
かげを付け終えたら明部とハイライトを入れます。
机と同じく覆い焼き(発光)レイヤーと以下の明部色を使います。
明部には「不透明水彩」を、ハイライトには「C油彩」を使って明るくなる部分を強調しました。
⑥ 反射光
明暗が付け終わったので次に反射光を入れます。
机と同じくオーバーレイレイヤーと以下の反射色を使います。
座面と脚の床側に「不透明水彩」で反射色をのせました。
⑦ 質感
最後に質感を加えます。
質感を描くときには、机と同じく固有色に対して少し暗い色と少し明るい色を使います。
座面と背もたれの部分については、まず「質感ブラシ」で陰影を補強し、
「J.鉛筆2ブラシ」で布の質感を加えます。
そしてさらに縫い目の部分を「質感ブラシ」で描き足します。
最後に、脚の部分に「油彩平筆」で木材の質感を加えたら椅子は完成です。