この記事ではフリーランスのイラストレーターである筆者が、自身の経験も踏まえて趣味はもちろんイラストの仕事でも使えるPCとモニターの選び方を紹介します。
PCのおすすめスペック
イラスト制作用のPC選びの基準はペンタブレットとイラスト制作ソフトが快適に動くスペックになりますが、筆者個人の見解としては、最低限以下の4つの項目に着目して選べば趣味はもちろん仕事でも使えるPCだと思います。
項目 | 条件 |
---|---|
CPU | Intel Corei7 以上 |
メモリ | 16GB 以上 |
グラフィックス | GeForce GTX 1660 以上 |
ストレージ | SSD |
基本的に同価格帯であればノートPCよりもデスクトップPCの方が高性能にできるので、作業スペースを確保できるのであればデスクトップPCを選ぶと良いでしょう。
以下各項目について説明していきます。
CPU
CPUはイラスト制作時の処理速度に関わり、レイヤーの数が多くなったり解像度が高くなるほど高い性能のCPUが必要になります。
代表的なCPUはIntel社のCoreシリーズとAMD社のRayzenシリーズになりますが、どちらも名前の後ろの数字が大きいほど性能も価格も高くなります。
基本的にはCorei7またはRayzen7以上の性能があれば解像度の高いイラストや細かいタッチのイラストの制作も問題なく行えるでしょう。
趣味やシンプルなタッチのイラスト制作であればCorei5やRayzen5にして価格を抑える選択肢もあります。
メモリ
メモリは、イラスト制作をしながら資料画像を別のソフトで表示させるなど一度に複数のことを並行して行う場合に使用されます。
基本的に16GBあればイラスト制作は問題なく行えますが、個人的にはキャンバスサイズが一辺5000pxを超えるあたりから16GBでは少し動作が遅く感じます。
なので、大きいサイズでイラスト制作をしたい場合や並行して他のソフトを複数起動させたい場合には32GBも選択肢に入ってきます。
またAdobeのPhotoshopやIllustratorを使用する場合には16GB以上が公式の推奨スペックになっています。
趣味やソフトを並行して使わないのであれば8GBにして価格を抑える選択肢もあるでしょう。
グラフィックス
GPU、グラフィックボードと呼ばれることもあり、3Dを使用する際やマルチモニターの表示、高解像度やレイヤー数の多いイラスト制作を遅延なく行うために必要になります。
代表的なグラフィックスはNVIDIA社のGeForceシリーズとAMD社のRadeonシリーズがありますが、 CPU同様後ろの数字が大きいほど性能も価格も高くなります。
イラスト制作においては筆者のような比較的細かいタッチであってもGeForce GTX 1660以上であれば問題ないでしょう。(グラフィックスの性能比較は製品名で検索すればだいたい出てきます。)
CPUにグラフィックスが内蔵されている場合もあり、代表的なものにIntel社のUHD グラフィックスやIris Xe グラフィックスなどがあります。
基本的には内蔵グラフィックスの方が安価なので、趣味やシンプルなタッチのイラスト制作であれば内蔵グラッフィクスにして価格を抑える選択肢もあるでしょう。
液晶ペンタブレットやモニターを複数使用する場合、Photoshop、Illustratorを使用する場合には内蔵ではなく単体グラッフィクスがほぼ必須になると思います。
ストレージ
ストレージはHDDよりもSSDの方が読み込みや保存が早くなるのでSSDがおすすめです。
バックアップなどの観点から個人的にはCドライブのSSDとは別にHDDを追加して、イラスト制作ソフトのインストールはSSDに、イラストデータの保存はHDDにする運用がおすすめです。
イラスト制作まわりのソフトを入れるだけであればCドライブのSSD容量は128~256GB、データ保存用の追加HDD容量は1~2TBもあれば十分でしょう。
おすすめのPCショップ
慣れている場合はPCを自作しても良いですが、そこまで詳しくない場合にはBTO(受注生産)パソコンのショップで購入するのがおすすめです。
筆者が普段仕事で使っているPCもBTOパソコンショップのサイトで購入したもので、以下に代表的なショップを紹介します。
これらのショップでは上で説明した項目のパーツごとにカスタマイズができるので、クリエイター向けPCで検索したものをベースにカスタマイズして欲しい性能に調整すると良いでしょう。
価格の目安としては、10万円前後で趣味としては十分、15万円以上で大きなサイズのイラスト制作もスムーズといった感じです。(最近はパーツの価格高騰でこれよりも予算が必要な状況になっています。)
筆者は15~20万円の価格帯のデスクトップPCを使用していますが、イラスト制作時の動作でストレスを感じたことはありません。
これよりも高価格帯のPCは、3Dソフトや動画編集ソフトも快適に使いたいといった人向けです。
モニターのおすすめスペック
デスクトップPCを選んだ場合には当然別途モニターが必要になりますが、ノートPCの場合でも別でモニターがあると作業がしやすくなるのでスペースに余裕があれば導入を検討すると良いでしょう。
またノートPCのモニター性能を判断する場合にも以下の内容を参考にしてもらえればと思います。
筆者個人の見解としては、最低限以下の項目に着目して選べばイラスト制作において趣味はもちろん仕事でも使えるモニターだと思います。
項目 | 条件 |
---|---|
サイズ | 21~24インチ |
解像度 | 1920×1080ピクセル(フルHD) |
駆動方式 | IPSまたはADS |
表面処理 | 非光沢(ノングレア、アンチグレア) |
発色性能 | 低価格帯(1万円以下)のものは避ける |
サイズ、解像度
サイズに関しては、小さいと作業がしにくいため最低でも21インチはあると良いでしょう。
一方で大きすぎると自身の視野に収まらなかったり解像度が高くないと画面が粗く見えてしまうので、大きくても24インチ程度がおすすめです。
解像度はフルHD(1920×1080ピクセル)のもので十分ですが、24インチよりも大きいサイズを選んだ場合には2.5Kや4Kのものも検討すると良いと思います。
駆動方式、表面処理
モニターを斜めから見た時の色・明るさの変化が少ないIPS方式またはADS方式かつ、モニター表面における光の反射が少ない非光沢処理されたものがおすすめです。
発色性能
基本的には価格が高くなるほど発色性能も高くなりますが、個人的にはよほど低価格の製品を使わない限りはそれで仕事にならないという事態にはならないと思うので、1~4万円程度のものを選んでおけば仕事でも十分使えるでしょう。
おすすめのモニター
ここでは主要メーカーから出ているおすすめのモニターを価格別に紹介します。
価格重視の人向け
製品名 | EX-A221D |
メーカー | アイ・オー・データ |
サイズ | 21.5インチ |
解像度 | 1920×1080ピクセル(フルHD) |
駆動方式 | ADS方式 |
表面処理 | 非光沢 |
角度調整 | 上:20° / 下:5° |
高さ調整 | 調整不可 |
価格 | ¥12,980(2024.9.13 Amazon) |
こちらは価格重視の方におすすめの国産モニターです。
モニターは高さと角度が調整できる製品だと作業環境がカスタマイズしやすいのですが、この製品は低価格帯ゆえに高さ調整はできないのでその点は注意してください。
同メーカーの同価格帯には24インチの製品「EX-A241D」もあります。ただしこちらも高さの調整はできません。
製品名 | S2425HS |
メーカー | Dell |
サイズ | 23.8インチ |
解像度 | 1920×1080ピクセル(フルHD) |
駆動方式 | IPS方式 |
表面処理 | 非光沢 |
角度調整 | 上:21° / 下:5° / 右回り30° / 左回り30° |
高さ調整 | 130mm |
価格 | ¥20,800(2024.9.13 Amazon) |
こちらは上の製品よりも価格は上がりますが、その分サイズが大きくなり高さの調整もできるDell(デル)のモニターです。
より価格を重視する場合は、これらのメーカーの他にもPHILIPS(フィリップス)から低価格帯のモニター(242E2FE/11など)が出ているので選択肢に入るかもしれません。
性能重視の人向け
製品名 | EV2460 |
メーカー | EIZO |
サイズ | 23.8インチ |
解像度 | 1920×1080ピクセル(フルHD) |
駆動方式 | IPS方式 |
表面処理 | 非光沢 |
角度調整 | 上35° / 下5° / 右回り90° / 左回り90° |
高さ調整 | 140mm |
価格 | ¥41,580(2024.9.13 直販サイト) |
EIZO(エイゾー)は映像分野向けに高性能なモニターを出している国内メーカーです。
こちらの製品はEIZOの中では低価格帯のものですがイラスト制作には十分な性能なので、予算が許すのであればEIZOのモニターを選んでおくと安心です。
製品名 | CS2400R |
メーカー | EIZO |
サイズ | 23.8インチ |
解像度 | 1920×1200ピクセル |
駆動方式 | IPS方式 |
表面処理 | 非光沢 |
角度調整 | 上35° / 下5° / 右回り90° / 左回り90° |
高さ調整 | 155mm |
価格 | ¥59,950(2024.9.13 直販サイト) |
モニターは使い続けていくと色味が変化してしまうのですが、その色味の変化を補正することをキャリブレーションと言います。
この製品は発色性能が良いだけでなく、外付けのセンサー(別売)と組み合わせることでキャリブレーションを行うことができます。
予算に余裕があり色もきちんと管理しておきたいという場合は、こういったキャリブレーション機能付きのモニターも選択肢に入ってくるかと思います。
筆者は液タブに上記2つのEIZOモニターをサブモニターとして使っています。
これらよりさらに上位のモデルもありますが、基本的にイラスト制作においてはオーバースペックかと個人的には思います。