この記事では、イラストとは関係のない業界の会社員からフリーランスのイラストレーターになって3年経った筆者の年収と支出を公開し、その結果をもとにフリーランスのイラストレーターは生計を立てられる職業かについて考えてみます。
フリーランス1~3年目の業績は以下の記事で公開しています。
3年間の売上
まず、筆者が2020~2022年の3年間にイラスト業で得た月別の売上を以下に示します。
月 | 2020年売上 [円] | 2021年売上 [円] | 2022年売上 [円] |
---|---|---|---|
1 | 112,200 | 449,625 | 228,932 |
2 | 97,588 | 354,100 | 151,755 |
3 | 45,714 | 287,829 | 178,084 |
4 | 52,186 | 358,687 | 248,764 |
5 | 281,080 | 10,685 | 718,077 |
6 | 246,707 | 164,497 | 225,296 |
7 | 14,725 | 905,247 | 117,878 |
8 | 438,871 | 41,577 | 343,187 |
9 | 102,102 | 1,354,618 | 216,050 |
10 | 67,905 | 154,822 | 136,572 |
11 | 174,599 | 13,916 | 801,599 |
12 | 305,972 | 311,805 | 36,500 |
合計 | 1,939,649 | 4,407,408 | 3,402,694 |
3年間で年間売上は約190万~440万円と幅がありますが、平均をとると年収3,249,917円になります。
売上の内訳は各年の業績まとめ記事で公開しています。
2022年の税金・保険料
次に、筆者の2022年の税金・保険料を以下に示します。
住民税 [円] | 文美健康保険料 [円] | JILLA年会費 [円] | 国民年金保険料 [円] | 所得税 [円] | 個人事業税 [円] |
---|---|---|---|---|---|
92,800 | 253,200 | 24,000 | 195,550 | 58,683 | 12,600 |
※補足
住民税、所得税、個人事業税
経費(PC,液タブ等の固定資産の減価償却、家事按分した家賃・電気代・通信費、技法書等の参考書籍購入費、同人誌の印刷代など)を引いた2021年の所得は約340万円でした。
健康保険料
文芸美術国民健康保険組合に加入しており保険料は収入に関わらず一定額です。加入するためには組合加盟団体の会員である必要があるため、日本イラストレーション協会(JILLA)に加入しています。
これら税金・保険料の合計は、636,833円になります。
2022年の生活費
さらに、筆者の2022年の生活費を以下に示します。
月 | 家賃 [円] | 電気代 [円] | ガス代 [円] | 水道代 [円] | 通信費 [円] | 食費 [円] |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 80,500 | 5,108 | 10,038 | 3,933 | 1,304 | 25,824 |
2 | 80,500 | 6,758 | 9,090 | 0 | 1,293 | 20,063 |
3 | 80,500 | 11,454 | 8,496 | 3,909 | 1,234 | 21,954 |
4 | 80,500 | 10,915 | 6,965 | 0 | 1,212 | 28,363 |
5 | 80,500 | 6,948 | 5,434 | 3,909 | 1,213 | 31,422 |
6 | 80,500 | 9,423 | 4,906 | 0 | 1,213 | 23,952 |
7 | 80,500 | 4,949 | 4,601 | 3,982 | 1,213 | 24,244 |
8 | 80,500 | 9,233 | 3,757 | 0 | 1,213 | 19,781 |
9 | 80,500 | 12,950 | 3,986 | 3,933 | 1,213 | 24,807 |
10 | 80,500 | 10,436 | 4,177 | 0 | 1,213 | 26,304 |
11 | 80,500 | 6,517 | 4,879 | 3,823 | 1,252 | 28,121 |
12 | 80,500 | 6,442 | 6,248 | 0 | 1,242 | 23,346 |
合計 | 1,041,000 | 101,133 | 72,577 | 23,489 | 14,815 | 298,181 |
※補足
家賃
都内一人暮らしで1DKの物件を借りており共益費込みの料金です。
電気代
PC, 液タブなどの作業に必要な機器をほぼ毎日8~12時間稼働させています。
ガス代
プロパンガスの物件のため都市ガスよりも割高です。キッチンはガスコンロで毎日自炊で使用し、お風呂は基本的に浴槽にお湯を溜めることはなくシャワーのみです。
通信費
インターネットが無料で使用できる物件のためネット回線料金は家賃に含まれています。スマホは基本的に自宅のWi-Fi環境下で使用するため格安SIMの500MB/月プランです。
食費
食事は基本的に毎日自炊しており外食は月に1~2回程度です。
これら生活費の合計は、1,551,195円になります。
フリーランスのイラストレーターは生計を立てられる職業か
結論から言うと、上記の収入と支出から筆者個人の見解としては、フリーランスのイラストレーターは少なくとも一人分の生計は立てられる職業であると考えています。
以下数字で見ていきます。
A | 年間売上(3年間の平均値) | 3,249,917円 |
B | 税金・保険料(2022年) | 636,833円 |
C | 生活費(2022年) | 1,551,195円 |
A-B | 手取り | 2,613,084円 |
A-B-C | 残金 | 1,061,889円 |
まず、年間の手取りは年間売上(A)と税金・保険料(B)の差額なので、(A)-(B)で2,613,084円になります。
次に、この手取りから生活費(C)を捻出することになるため残金は、(A)-(B)-(C)で1,061,889円になります。
そして、今回上記の生活費には機材・書籍・印刷費、日用品・生活雑貨費、娯楽費などは含めていないため、残金から更にこれらの費用を引いた額が、最終的に貯蓄や資産運用に当てられる余力金になります。
上記の生活費に含めていない費用に関して言及すると、まず機材については、イラストレーターの場合最初にPCやタブレット等を購入すれば数年間はそのまま使用できるため毎年かかる機材費はほとんどありません。
イラスト制作においてはそこまでハイスペックな機材が必要となる訳ではないため、最近では20万~50万円もあればプロ仕様の機材一式を揃えることができると思います。制作ソフトに関しても、CLIP STUDIO PAINT、Photoshopのどちらを使うにしても年間1万円前後からの料金で使用することができます。
筆者の場合機材やソフトはすでに揃っており、同人誌発行の印刷代を含めたとしても年間で20万円もかからない程度です。
また、その他の日用品・生活雑貨費、娯楽費なども筆者の場合かかっても年間で10万円程度のため、上記残金の1,061,889円からこれら20万+10万=30万円を差し引いても、年間で約70万円は余力金として残ることになります。
そのため、この余力金で家族を養うなどは厳しいように感じますが、一人分であれば生計は立てられるラインであると筆者は考えています。
最後に
年間の生活費や貯蓄にまわしたい額などは個人によってバラつきがあると思うので、この記事で示した内容はあくまで一例です。
また3年間の売上を見てわかるように収入も不安定なので、現状は生計を立てられていますが今後生計が立てられなくなる可能性も十分にあります。
気軽にフリーランスのイラストレーターという職業を勧められるとまではいきませんが、決して生計を立てられない職業ではないと筆者は思うので、この記事がフリーランスやイラストレーターになりたい方々の参考に少しでもなれば嬉しく思います。