この記事ではイラストレーターである筆者が、イラストの仕事で使うためのイラスト制作ソフトの選び方を紹介します。
仕事で使うならフォトショかクリスタがおすすめ
最近では無料のイラスト制作ソフトでも高性能なものが出ていますが、高性能と言えど仕事となると機能面や使い勝手でやはり足りない部分が多いです。
そのためまず前提として仕事で使う場合には有料ソフトがおすすめです。
そこでこの記事では仕事で使える以下の5つの有料ソフトを紹介します。
製品 | 概要 | 価格(税込) |
---|---|---|
Photoshop | 本来は写真加工用だが昔から業界で使われてきたソフト。多くの人や工程が入る制作現場ではスタンダードとされる。 | 月額¥2,380~ |
CLIP STUDIO PAINT | 趣味から仕事まで幅広いユーザーが使用しているお絵描きソフト。イラスト制作に特化したアップデートにより現在では主流に。 | 月額¥480~ 買い切り¥5,900~ |
Procreate | iPad専用のソフト。制作がiPadで完結する場合などは選択肢に入る。 | 買い切り¥2,000~ |
Illustrator | Photoshopと同じAdobe社のソフト。ロゴ、デザイン、印刷などに力を入れる場合は必要になる。 | 月額¥3,280~ |
SAI | アップデートが2016年以降無いが、描き味の良さから使い続ける一部のユーザーあり。 | 買い切り¥5,500 |
以下でそれぞれのソフトの特徴を説明しますが、最初に結論を言ってしまうと
- 企業でイラストの仕事をしたい場合 :Photoshop
- 副業・フリーランスでイラストの仕事をしたい場合 :Photoshop または CLIP STUDIO PAINT
というのが筆者の見解です。
順番にそれぞれのソフトについて見ていきましょう。
Photoshop
Photoshop(フォトショップ、通称フォトショ)は、Adobe(アドビ)社が出している画像編集ソフトです。
以前は買い切り版もあったのですが現在は月額(または年額)購入のみとなっています。
プラン名 | 内容 | 価格(税込) |
---|---|---|
フォト | Photoshop+Lightroom | ¥2,380/月 |
Photoshop | Photoshop+Adobe Express Premium* *アドビのストック写真やフォントが使えるサービス | ¥3,280/月 |
Creative Cloudコンプリートプラン | Photoshop, Illustratorを含む21のソフト | ¥7,780/月 |
イラスト制作だけであれば基本的に「フォト」で事足りますが、フォトバッシュなどで写真を使ったり、デザイン、アニメーションも行う場合には「Photoshop」「Creative Cloudコンプリートプラン」も選択肢に入ってきます。
以下にPhotoshopの強みと弱みをまとめました。
Photoshopの強み
- 色や明るさの調整、フィルタなどの加工処理機能の性能と豊富さはダントツ
- IllustratorやAffter Effectsなどのアドビソフトと互換性をもつ
Photoshopの弱み
- 他のソフトよりも高価
- 負荷がかかりやすいのでPCにはある程度のスペックが求められる
- アップデートで不具合が生じることがしばしばある
- 写真加工向けのソフトなのでイラスト制作向けの機能アップデートはない
加工処理機能については他のソフトと一線を画すので、メインの制作はCLIP STUDIO PAINTで行い仕上げの加工処理のみPhotoshopで行うという人も多いです。
また他のアドビソフトと互換性があるので、アニメやゲームなど多くの工程をはさむプロジェクトにおいて標準とされるソフトです。
一方で価格は高くプロユースのソフトと言えます。
なので、以下のような人にはPhotoshopがおすすめです。
- 価格が気にならない
- 豊富な加工処理機能を使いたい
- 企業でイラストの仕事をしたい
- 大きなプロジェクトに入ってイラストの仕事をしたい
CLIP STUDIO PAINT
CLIP STUDIO PAINT(クリップスタジオペイント、通称クリスタ)は、株式会社セルシスが出しているイラスト・漫画制作ソフトです。
昔はイラストの仕事と言えばPhotoshopほぼ一択でしたが、イラスト制作に特化したアップデートにより今ではプロも仕事で使うソフトとなっています。
月額(または年額)と買い切りがありますが、買い切りの場合は品質改善アップデートのみで機能アップデートがありません。
製品名(ダウンロード版) | 価格(税込) |
---|---|
CLIP STUDIO PAINT PRO | 月額¥480~ 買い切り¥5,900 |
CLIP STUDIO PAINT EX | 月額¥980~ 買い切り¥24,900 |
PROとEXがありますが、EXは主に漫画・アニメーション制作に関する機能を拡張したものなので、イラスト制作においてはPROで十分です。
あとでPROからEXに優待価格でアップグレードすることも可能
以下にCLIP STUDIO PAINTの強みと弱みをまとめました。
CLIP STUDIO PAINTの強み
- 安価にも関わらずイラスト制作において十分な性能と機能をもつ
- イラスト制作のための無料素材が多く揃っている
- イラスト制作向けの便利機能が多く、機能アップデートも積極的に行われている
CLIP STUDIO PAINTの弱み
- Photoshopと比べると加工処理機能は一部物足りない
- psdファイルの読み込み・書き出しはできるがPhotoshopと完全に互換性がある訳ではない
- psd形式でのベクターレイヤーの書き出しができす、aiファイルの読み込みもできない
- CMYKで編集ができない(プレビュー機能はあり)
公式の素材配布サイトであるCLIP STUDIO ASETTSにはブラシ、テクスチャ、3Dモデルなど様々な素材が揃っており、その多くは無料で利用することができます。
2020年のアップデートでPhotoshopのブラシ(.abr形式)を読み込めるようになったのも大きいです。
またパース定規は背景を描くときには欠かせない機能で、Photoshopにもプラグインで似たようなものがありますが、それよりも直感的で使いやすいものとなっています。
一方で、加工処理やデザイン、印刷まわりの機能はアドビソフトと比べると弱いです。
アドビソフトと互換性がなくpsdファイルの読み書き時には色味やレイヤー情報が変換されてしまうので、制作がPhotoshopに指定されている仕事には対応できません。
なので、以下のような人にはCLIP STUDIO PAINTがおすすめです。
- コストを抑えたい
- パース定規などの便利な機能を使いたい
- Photoshopほどの加工処理機能は必要ない
- 仕事でPhotoshopが必要になることがなさそう
ちなみに筆者は開業してからCLIP STUDIO PAINTのみを使っています。
制作ソフトにPhotoshopを指定された案件に出会ったのもこれまでに1回だけです。
Procreate
Procreate(プロクリエイト、通称プロクリ)は、Savage Interactive社が開発したiPad専用のイラスト制作アプリです。
製品名 | 価格(税込) |
---|---|
Procreate for iPad | 買い切り¥2,000 |
Procreate Dreams | 買い切り¥3,000 |
購入は買い切りのみで、Procreate Dreamsはアニメーション向けなのでイラスト制作においてはProcreate for iPadを選ぶことになります。
Procreateの強み
- 月額制のみのiPad版PhotoshopとCLIP STUDIO PAINTに対して買い切りかつ安価で購入できる
- タブレットで直感的にイラスト制作ができるユーザーインターフェース
- iPadなので場所を選ばずイラスト制作ができる
Procreateの弱み
- ショートカット設定など細かいカスタマイズができない
- レイヤー枚数に制限がある
- iPadなので大きなサイズや細かいイラストの制作には向かない
タブレットでの操作に合わせた直感的で使いやすいUIが魅力です。
iPad専用ゆえにPCソフトと比べると制約も多いですが、用途や目的によっては仕事でも使えるソフトです。
なので、Procreateは以下のような人におすすめです。
- コストを抑えたい
- iPadユーザー
- iPadだけで完結できる絵柄で仕事をするつもり
- ラフなど工程の一部のみiPadで行いたい
Illustrator
Illustrator(イラストレーター、通称イラレ)は、Adobe社が出しているベクターイメージ編集ソフトです。
Photoshopと同じく購入は月額(または年額)のみです。
プラン名 | 内容 | 価格(税込) |
---|---|---|
Illustrator | Illustrator+Adobe Express Premium* *アドビのストック写真やフォントが使えるサービス | ¥3,280/月 |
Creative Cloudコンプリートプラン | Photoshop, Illustratorを含む21のソフト | ¥7,780/月 |
ちなみにPhotoshopとIllustratorのみ欲しいという場合は、「フォト ¥2,380/月」と「Illustrator ¥3,280/月」の組み合わせで購入するのが最も安くなります。
Illustratorの強み
- ベクターデータで制作ができる
- 図形やテキストの編集など優れたデザイン機能をもつ
- 他のアドビソフトと互換性がある
Illustratorの弱み
- コストがかかる
- Photoshopと同じくPCにはある程度のスペックが求められる
- シンプルな絵柄以外のイラスト制作には向かない
デザインをするためのソフトで、同人誌や自身のグッズなどのデザインで使う人も多いです。
基本的にイラスト制作には向きませんが、例えばアバターなどのシンプルなイラスト制作においてはIllustratorの方が効率良く制作できる場合もあります。
なので、Illustratorは以下のような人におすすめです。
- 自作グッズなどでデザインや印刷にも力を入れたい
- シンプルな絵柄で仕事をするつもり
SAI
SAI(サイ)は、株式会社SYSTEMAXが出しているペイントソフトです。
製品名 | 価格(税込) |
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SAI | 買い切り¥5,500 |
SAIの強み
- 他のソフトにはない描き味の良さ
- 安価だがイラスト制作には十分な性能
- 動作が軽い
SAIの弱み
- 図形やテキストの編集、色・明るさの調整、ぼかしなど描画以外の機能は少ない
- 機能アップデートがほとんどない
2014年に正式版がリリースされ、価格と描き味の良さから当時はアマチュアからプロまでユーザーが多くいました。
ですが機能アップデートがほぼなく、現在は仕事の上では描き味にこだわる一部のユーザーのみが使用するソフトとなっています。
なので、SAIは以下のような人におすすめです。
- コストを抑えたい
- PCのスペックを抑えたい
- 最低限の機能でよい
- 線画など工程の一部のみでも描き味にこだわりたい
まとめ
イラストの仕事で使える5つのソフトを紹介しましたが、基本的にはPhotoshopかCLIP STUDIO PAINTを選んでおけば間違いないです。
あとは自身の絵柄や制作スタイル、やりたい仕事に応じて追加で導入するか検討すると良いと思います。
ソフトの無料体験も上手に活用しましょう。